性状はJIS規格等で厳密に決められているものの、軽油という特定の分子構造が存在する訳ではなく、数百〜数千種類の炭化水素の混合物です。炭素鎖の炭素数だけで言えば、C12~C16程度の炭化水素混合物となります。長鎖の炭化水素を、より短い性状の長さで切ってやれば軽油やガソリンを作る事が出来るのではないか、との発想で作られたのがFCC触媒であり、現在重油成分からより需要の大きい軽油やガソリンを生成する技術として一般的に利用されています。
触媒の作用によって生ずる分解化学反応のことを接触分解といいます。
ここで用いられる触媒、ゼオライトの特徴としては、次の二つがよく知られています。
・ゼオライトには微細な孔が存在し、この孔の直径に応じて入れる分子の大きさが限定されるため、ゼオライトには小さな分子のみが吸着して大きな分子は吸着しないこと。
・固体であるにもかかわらず酸性を示す固体酸であり、反応の際に酸触媒として機能できること。
この二つの特徴がゼオライトの触媒としての画期的な機能を導き出す要因であることがわかってきました。この小さな分子のみを吸着する選択性と、固体酸の酸点を利用し、連続的にプロトン(H+)を供給することにより、炭化水素の低分子化を行うことが理解できます。
たとえば、個体酸(特殊なゼオライト)の場合、アルカン(CnH2n+2)の炭素鎖を切断するなどの激しい反応を起こすことができます。切断されたアルカンには、瞬時にプロトン(H+)が供給され、安定した分子となります。それが軽油の長さに合う孔を持つゼオライトである場合、周りの雰囲気が300℃前後ならば、液体で留まることが出来ずに瞬間的に蒸発してしまうのです。それを蒸溜塔で回収し冷却すると、軽油が製造されるのです。